ペルシャ絨毯の歴史

現存する世界最古のパジリク絨毯

1949年、ロシア人考古学者により南シベリアのアルタイ山中のパジリク渓谷から発掘されました。2m×1.89mのパイル絨毯で紀元前5世紀ごろの作であると想定されています。永久凍土で凍結していたため、今日まで残った稀有な例だと言われています。スキタイ族の部族長の古墳から出土したこの絨毯の技法はトルコ結びで、10㎠ に約3600ノットを有する緻密なものだそうです。文様構成が古代ペルシャのアケメネス朝時代のペルセポリス遺跡にあるモチーフに似ていることからペルシャ製だと推定されています。
また、洗練されたデザインや技術、完成度から、パジリクよりも遥か以前に手織絨毯の技術は発達を遂げていたと想定されます。つまりペルシャ絨毯の起源は2500年前のパジリクよりさらに遡り、今から3000年前から5000年前とも言われています。


パジリク絨毯
エルミタージュ美術館(サンクトペテルブルグ) 所蔵

生活の中の実用品としての絨毯

絨毯は本来、生活に密着した実用品です。羊などを遊牧しながら暮らす人々が、湿気・寒さ・日差しを凌ぐものや、鞍袋・塩袋に代表される物入れ、飾りや壁掛け、食布など生活必需品として織ってきました。また遊牧生活での移動時、運搬が容易なものでなければなりませんでした。そうした生活の中で生まれ、使い続けてきたものなのです。
 
のちに絨毯はその紋様・意匠、染色、技術など美術的価値が付加され、時代や国境を越え人々を魅了してきました。

実用品として使用し、傷めば修理、その後は廃棄されるという運命から現存するパイル絨毯の大半は17世紀以降のものです。
現存するペルシャ絨毯で一番古いものはイギリスの博物館にある『アルダビール絨毯』と名付けられたサファヴィー朝時代のものです。イラン北西部アゼルバイジャン地方のアルダビールのイスラムの聖廟に収められたもので、1539年から1540年にかけて制作されました。絹糸と羊毛が素材として使用され、1インチ四方あたり300から350の編目で織られており、10.5×5.3メートルの大きさの絨毯です。

アルダビール絨毯
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)所蔵