Mehrali Carpetができるまで
イランと言うと荒涼とした砂漠に灼熱の太陽だけをイメージされがちですが、その国土は日本の約4倍、
北はカスピ海から南はペルシャ湾まで南北に亘ります。日本同様、四季があり気候や文化にも地域差や特徴があります。降雨量が多く、温暖で緑に包まれたカスピ海沿岸地方や夏季は温暖・乾燥、冬季は多量の雪が降る山岳地帯、降雨量が少なく、夏冬・昼夜の気温差の激しい砂漠地域など豊かな自然に恵まれています。
絨毯ができるまで、それぞれの工程にデザイナー、下絵描き職人、織り職人、染色職人、洗濯職人、仕上げ職人など、経験を積んだ多くの熟練職人が携わっています。自然素材と天然染料を使用し、職人のこだわりと誇りで時間と手間をかけて作り上げています。
素材
羊の品種や色は様々です。気候や海抜、
牧草により地域差があり、羊毛の質も
それぞれ個別の特性を持っています。
メヘラリ・カーペットではファールス地方、
最上級の羊毛のみを使用しています。
刈取り
川で羊を丁寧に洗い、乾燥させた後に刈り込みます。
春と秋に刈り込みをしますが、メヘラリ・カーペットでは
春の羊毛だけを使用します。
早春に刈り取る春毛は細くて柔らか、
毛足も長く脂分を多く含んでいるためです。
最上と言われるのは肩から背にかけての部分で、
刈り取った羊毛から良質な部分を選別します。
洗い
刈り取った羊毛は繰り返し洗い、
余分な脂分や汚れを取り除きます。
この工程で洗いすぎると必要な脂分まで取り除いてしまい、
柔らかさを失なってしまいます。
また反対に洗いが不十分だと余分な脂分が残り、染料の吸着が悪くなる為、「染め」の工程の仕上りにも影響します。
紡ぎ
洗浄した羊毛を乾燥させた後、糸車は使用せず、手で糸を紡ぎます。羊毛が絡まって毛玉になっている部分は必ず取り除いて紡ぎます。
紡ぎは女性の仕事です。織りの工程でも同じですが、
楽しく会話しながらも手を休めることはなく、その手さばきは迅速で確実。熟練職人の成せる技です。
染め
生産工程の中で最も重要な工程のひとつです。
天然染料での染色は複雑で微妙な為、熟練した匠の技が必要です。
合成染料は低コストで簡易に安定した希望の色を出すことが可能ですが、自然の恩恵を受けて育った草木を使用する天然染料の色とは美しさと深みが違います。
メへラリ・カーペットでは200色以上のカラーコードを有しています。
≪代表的な天然染料≫
赤・・・茜の根、コチニールなど
黄・・・ザクロの皮、ブドウの葉など
青・・・インディゴ
緑・・・ジャシール(灌木)、インディゴとザクロの皮またはブドウの葉を混ぜて使用
茶・・・胡桃、樫の木
織り
織り機には立てて使用するものと寝かせて使用するものの2種類あります。どちらも織り機に張った経糸にパイル糸を絡ませ、ひとめ結んで切ります。結んでは切り、結んでは切りの作業を繰り返し、
横一列を結び終えると緯糸を通して櫛状の打具でたたいて押さえます。
ある程度織り進むと余分なパイル糸をはさみで切り揃えます。
小さなものは1人で、大きなものは数人が並んでそれぞれのパートを織り上げます。
経糸は絨毯の土台となる為、歪みやよれないことが重要です。
そのため丈夫で型崩れしにくい木綿が多く使用されます。
また、パイル糸を結ぶ手法には「FARSI ファルスィー(左右不均等結び)」と「TORKY トルキー(左右均等結び)」があります。
この呼び名の為に、間違った解釈をされているケースが多いのですが、
これらは単なる名称であり、トルコ本国やトルコに近い地域の絨毯が「TORKY」
というわけではなく、イラン全域で 「FARSI」と「TORKY」が混在しています。
ちなみにメヘラリ・カーペットのギャッベは「TORKY」、絨毯は「FARSI」です。
洗い・乾燥
羊の脂分から作られた天然石鹸で織り上がった絨毯を洗い、余分な遊び毛を取り除きます。その後、専用脱水機で脱水し、天日に干します。メヘラリ・カーペットの絨毯はこの「洗い→乾燥」の工程を約1か月かけて3度行います。
時間と手間をかけて行うことにより、色は落ち着き、羊毛に含まれる脂が乗り、滑らかになります。また、お客様の手元に渡った時にはほとんど色落しない状態になっています。
仕上げ
掃除機とバリカンが一体化した専用器具で表面を平らに仕上げ、糸くずを除去します。その後、ヘリ部分(シーラーゼ)の処理を行います。
通常の工程はここで終了する場合が多いのですが、メヘラリ・カーペットではもうひと手間をかけ、経糸であるフリンジ部分をギリムバフ(平織)処理し、内側に折り込んで縫う工程を施して仕上げています。